かつてのアートコレクションのあり方は、特定のアーティストを選び、その成長を長期間にわたって支える「パトロン」のような形が一般的であった。
しかし、現在ではそのようなアプローチを取るコレクターはほとんど見られなくなった。時代の変化とともに、アートの購入方法は多様化し、コレクターたちの選択肢は大幅に広がったのである。
その背景には、コマーシャルギャラリーの増加がある。
ギャラリーが増えることで、それに伴ってアーティストの数も増加し、コレクターが選べる作品の幅も広がった。結果として、一人のアーティストにこだわるよりも、ポートフォリオの一環として複数のアーティストの作品を購入するというスタイルが主流となりつつある。
また、アートフェアの多様化も影響を与えている。
これまで特定のギャラリーや展示会に頼っていた購入スタイルが、アートフェアやオンラインプラットフォームの発展によって多様化した。これにより、アーティストたちは広範囲な競争に直面することになり、現代は「大競争時代」とも呼べる状況が生まれている。
さらに、スマートフォンやSNSの普及により、誰もが写真家となり得る時代が訪れたのと同様に、AI技術の進化によって「誰もがアーティストを名乗れる」時代が到来しつつある。
このような状況では、コレクターにとってアーティスト選びの重要性が一層高まっている。以下では、「間違えない」アーティストの選び方について詳しく解説する。
アーティストの作品とキャラクターを知る
まず第一に、アーティストの作品だけでなく、その人となりやキャラクターも知ることが重要である。アーティストのもつ素養と、それを成長させる性格や環境が整っているかを見極める必要がある。
素養の重要性
アーティストとしての素養は、基礎的な表現力の有無に大きく関わる。何かを表現したいという情熱があっても、鑑賞者に「すごい」や「面白い」と感じさせる作品を作れる能力がなければ意味がない。
アーティストは頭の中のイメージをどこまで具現化できるか、またそれをどのように膨らませられるかが重要だ。
基礎的な表現力が欠けているアーティストが成功する可能性は低い。脳が指令を出し、それに応じて手が動くという技能は、アーティストにとって欠かせない要素であり、その能力について一定の評価を行うべきである。
性格の重要性
次に重要なのは性格である。途中で夢を諦めるアーティストは、長期的な成功を収めることが難しい。アーティストとしてのビジョンや目標を明確に持ち、それを達成するために粘り強く努力できる「根性」が求められる。才能があったとしても、忍耐力や胆力が欠けていれば、いずれ筆を置いてしまう可能性が高い。
環境の重要性
いくら優れた作品を生み出しても、それを多くの人に見てもらう環境がなければ、アーティストとして大成することは難しい。適切なギャラリーやマネジメントを受けることは、アーティストの成功に直結する要素である。
ギャラリー側は、アーティストのキャリアアップを支援するステージを提供し続けるべきであり、アーティストもそれに応じて成長することが求められる。ギャラリーが持つネットワークや市場での評価は、アーティストの成功に大きな影響を与えるため、その選択は慎重に行う必要がある。
知見と情報の活用
アーティストを選ぶには、広範な知見と情報が求められる。特に初心者のコレクターにとっては、専門家の意見を聞きながら進めることが最善の方法である。多様な情報源を活用し、作品の質やアーティストの将来性を評価することが、満足のいくコレクションを形成する鍵となる。
結論として、現代のアートコレクターにとって、アーティスト選びは単なる購入行為ではなく、戦略的な投資であると言える。そのためには、アーティストの素養、性格、環境を総合的に評価し、適切な選択を行うことが重要である。
これからの時代、アートの購入はますます多様化し、その価値も変化し続けるだろう。その中で、正しい選択を行うための知識と判断力を養うことが、コレクターにとって最大の武器となるのである。
セミナー開催
「アートとビジネスの融合がもたらす可能性」
1月23日(木)19:00~20:00